映画「ポテチ」について

映画「ポテチ」~心温まる感動のストーリー~

映画「ポテチ」について

映画「ポテチ」は、伊坂幸太郎による短編小説を原作とした映画です。原作は短編集「フィッシュストーリー」に所収されている書下ろし作品です。映画版は、これまで「アヒルと鴨のコインロッカー」「フィッシュストーリー」「ゴールデンスランバー」と、伊坂作品と多くのタッグを組んできた中村義洋が監督を務めました。中村監督は、2011年3月11日に発生した東日本大震災を受け、お世話になった仙台への恩返しをしたいという思いで本作を制作することを決意したのだそうです。撮影は2011年8月下旬から9月中旬にかけて仙台市内で行われました。音楽は、「フィッシュストーリー」「ゴールデンスランバー」に続いての参加となる斉藤和義が担当しました。2012年4月7日に仙台市で先行上映された後、同年5月12日に全国公開されました。

ストーリー

空き巣を生業としている青年・今村は、ある日“仕事”に入った家である留守番電話を聞いてしまいます。留守番電話の主の女性はどうやら家主の元彼女らしく、これから自殺すると泣き喚いているのです。お人よしの今村は彼女を放っておけず、「キリンに乗っていくから!」とわけのわからない言葉を残し、彼女がいるというビルの屋上へと向かいます。彼女は今村の説得で自殺を思いとどまり、二人はそれがきっかけで同棲することに。そんなある日、今村の彼女となった若葉は、彼の仕事ぶりが見たいと空き巣の現場へ同行することになります。今村が入った部屋はプロ野球選手の尾崎の部屋でした。今村と尾崎は同じ日に同じ病院で生まれたというつながりがあり、今村は尾崎の大ファンなのでした。ですが彼は、何かを盗む様子もなく、野球漫画を読んだりしてくつろいでいる始末。代わりに若葉が金目の物を見つけ、さっさと帰ろうと促しますが、今村は腰をあげようとはしません。そのとき、電話のベルが鳴り、メッセージが残されます。そのメッセージは、尾崎に助けを求める女性からのメッセージでした。若葉と出会ったときに似ているこの状況に、またしても今村は放っておくことができなくなり、電話の女性の元へと向かうことに。しかし、そこで待っていたのは尾崎から金をだまし取ろうとする詐欺師のカップルでした。そんなカップルに激怒する今村。怒っておなかがすいた二人は、車の中でポテトチップスを食べます。若葉はコンソメ味、今村は塩味を買いますが、今村は間違えて塩味を若葉に渡してしまいます。若葉は「コンソメ食べたい気分だったけど、塩味もいいもんだね。間違ってもらって、かえって良かったかも」といい、そのまま塩味を食べてしまいますが、その言葉に今村はなぜだか号泣するのでした。彼の涙の理由は、26年前に二人の赤ん坊が生まれたあの病院へと遡り・・・。

登場人物と出演者

今村忠司・・・濱田岳
空き巣の青年。中村を親分と慕い、共に仕事をしています。また、同業者の黒澤のことも慕っていて、信頼しています。同じ日に同じ病院で生まれた尾崎に対し、特別な感情を持っています。元は小説「ラッシュライフ」の登場人物です。
大西若葉・・・木村文乃
今村の恋人。交際していた恋人に裏切られ、自殺を試みる前に恋人の自宅に電話を掛けたところ、たまたまその家に空き巣に入っていた今村に説得され自殺を思いとどまり、それがきっかけで今村と交際することになりました、
黒澤・・・大森南朋
今村が尊敬する空き巣のプロであり、副業で探偵もこなしている人物。もとは著者の小説ラッシュライフの登場人物です。重力ピエロやサクリファイスにも登場しています。
中村親分・・・中村義洋
今村に親分と慕われている空き巣。親分と呼ばれることを快く思っていないようで、専務と呼ばれることもあります。
尾崎・・・阿部亮平
プロ球団・仙醍キングスの選手。入団二年目に首位打者を獲得したスラッガーですが、現在は補欠に甘んじています。
そのほかの登場人物
今村弓子(今村の母親)・・・石田えり
落合修輔(尾崎を騙そうとしていた男)・・・中林大樹
ミユ(尾崎を騙そうとしていた女)・・・松岡茉優
堂島監督(仙醍キングスの監督)・・・桜金造
通行人・・・竹内結子

スタッフ

  • 監督・・・中村義洋
  • 脚本・・・中村義人
  • 原作・・・伊坂幸太郎
  • 製作・・・若林雄介、松本聖、宇田川寧
  • 撮影・・・相馬大輔
  • 編集・・・李英美
  • 音楽・・・斉藤和義
  • 主題歌・・・斉藤和義「今夜、リンゴの木の下で」
  • 製作会社・・・ショウゲート、東日本放送、河北新報社、スモーク、ダブ
  • 配給・・・ショウゲート

感想

この映画の上映時間は68分と非常に短い作品なのですが、短い中にもぎゅーっといろいろな思いが詰まった温かい映画でした。「ポテチ」というタイトルに「?」となった人も多いと思いますが、これにはきちんと意味があるのです。私は原作を読んでから映画を観に行ったので、その意味も知っていて、車の中でポテチを食べるシーンではもう今村にもらい泣きしそうだったのですが、原作を読まずに観ていたらあのシーンは全く意味が分からなかったのではないかと思います。それでも彼がひとりで抱えていた「秘密」が分かると、とても切なくて「ポテチ」の意味も分かって思い出し泣きしてしまうことと思います。今村役を演じた濱田岳くんがとてもいいです。彼の頼りなげな風貌とちっちゃな体が余計に涙を誘います。母親のことを思い、劣等感を抱えながらもずっと一人で「秘密」を背負っていたのかと思うと可哀想でなりません。でも傍から見たら大事件になるようなことでも、淡々と何の違和感もないかのように描くのが伊坂幸太郎の凄いところだと思います。今村が空き巣を生業としていることに疑問を感じる人も多かったと思いますが、そこは伊坂作品だということで受け入れてほしいところです。また、今村もそうですが、大森南朋さん演じる黒澤はいろいろな伊坂作品に登場するおなじみの人物です。彼の過去の出演作(特に重力ピエロ)を知っていると、この映画ももっと楽しめると思います。伊坂作品が好きな人には堪らない映画ですが、逆に作品を知らない人にはどういう風に受け取られたのかなとちょっと心配になるところもありました。ですが、ストーリーは本当にいいです。前半のゆるい流れのなかにも意味のある言葉がたくさん散りばめられていて、結末を知ってから見直すとさらに面白い映画です。セリフの中に、「ホームランなんてただ遠くに球が飛ぶだけ」というものがあります。ホームランで人が幸せになれるかどうか疑問だという黒澤に対して若葉が言ったセリフなのですが、これにもきちんと意味があって、エンドロール後にそれが分かります。最後まで、目を離さずに観てほしい映画です。余談ですが、この映画では監督を務めた中村義洋が、中村親分として出演しています。濱田岳くんとの掛け合いがいい具合です。

映画「ポテチ」~心温まる感動のストーリー~